人工物の骨

Bones — yam @ April 3, 2009 6:04 pm

xray_dryer_nick

 

ここのところ、多くの時間を5月からの展覧会「骨」の準備に費やしています。今日も朝からずっと展示プランの打ち合わせでした。今、なぜ「骨」なのでしょうか。

新しくプロダクトをデザインするときに、私は製品の構造を考えることから始めます。デザイナーという仕事は、いきなりスケッチを描き始めるように思われているかもしれませんが、それはもう少し後。まずは既存のプロダクトを調べ、人が使っているのをじっくり見る事に時間をかけます。それと同時に、すでにあるものを分解して研究し、製造の現場に足を運んだりしながら、その製品の骨格の理想型を探ります。

製品のかっこよさが、表面の色や形に大きく左右されることは事実ですが、それ以上に重要なのが、プロポーション。人間だってモデルのように美しくなろうと思ったらまず体形を整えなくてはなりません。工業製品に贅肉がつくことはあまりないので、製品のプロポーションはほとんど骨格で決まります。

故に製品の骨格(構造と部品レイアウト)を考えることが、デザインの根幹だと思っているのですが、実際には、技術者が作った骨格を持ってきて、これにかっこいい外側を付けてくださいと依頼されることが少なくありません。そういうときに、こちらからまったく新しい骨格を提案すると結構、唖然とされます。中にはあからさまに、デザイナーなのにそこまで口を出すのかと言われることも。

そんな経験をもとに、デザインと骨格の関係について私なりに考え、多くの作家達に骨からデザインすることを呼びかけたのがこの展覧会です。明日からは少しずつ作家達の作品を紹介していきます。上の不思議な図像は、この展覧会にも参加してくれる写真家ニック・ヴィーシーによる写真。ニックは様々な人工物のレントゲン写真を発表しているちょっと変わった写真家です。

 

以下は「骨」展のプレスリリースから。

 

21_21 DESIGN SIGHT 第5回企画展

山中俊治ディレクション 「骨」

 ̶  つくられた骨、未来の骨̶

私たちの生活に深く関わる身近な題材をとりあげ、デザインの視点から様々な発信を行う21_21 DESIGN SIGHT は、三宅一生、佐藤 卓、深澤直人の3 人がディレクターを、川上典李子がアソシエイトディレクターを務め、年間のプログラムの企画を行っています。「チョコレート」「水」「人」「自然」に続く第5回企画展は、「骨」をテーマに展開します。

身体を支える骨に数十億年に渡る生物の進化の意味が込められているように、工業製品の骨格もまた、大きな役割を担っています。それらは素材の進化を物語るものでもあり、人々の「思考の骨組み」が具現化されたものとも表現できるでしょう。工業製品の骨格は、様々な意味においてデザインの根幹をなし、美を生みだしていると言えます。

展覧会ディレクターを務めるのは、デザインとエンジニアリング、双方の視点を持って活躍する、プロダクトデザイナーの山中俊治です。生物の骨や多種多様な工業製品の骨格のリサーチのうえで、国や世代、分野の異なる計12 組の作家が「骨」から着想を得た作品を発表します。

表層的なところを超えたデザインの意味そのものを深く考えていくことが必要とされる現在、「骨」という観点から私たちの周囲に改めて目を向け、骨格そのものから考察、表現した作品群を通して、ものづくりの今後の可能性をさらに思索していきます。

 

主催 21_21 DESIGN SIGHT、財団法人 三宅一生デザイン文化財団

会期 2009 年5 月29 日(金)~8月30 日(日)

休館日 火曜日

開館時間 11:00~20:00(入場は19:30 まで)

2 Comments »

  1. […] 今日は東大でお絵描きの授業。後は執筆ばかりしています。「骨」展に展示されるニック・ヴィーシーの写真群に添えるキャプションを書きました。 […]

  2. […] 「骨」展のカタログの編集者の方に、スケッチに何か言葉を添えませんかと言われて最初に浮かんだのがこの言葉でした。プロダクトをデザインするときに構造を考えることから始めるようにしてるのですが、一枚のスケッチを描くときでも同じですね。 […]

RSS feed for comments on this post. TrackBack URI

Leave a comment

Copyright(c)2021 山中俊治の「デザインの骨格」 All rights reserved. Powered by WordPress with Barecity