動物の骨格に魅せられて

Bones — yam @ 4月 4, 2009 9:40 pm

 

Bones_Yuzawa

一冊の写真集がある。漆黒の背景に浮かび上がる様々な生物の骨格。生きているときの配列が忠実に再現された白色の物体は、しなやかに連動し、伸び上がり、走り、滑空する。骨という構造体が抽出されることで、生物の持つ躍動感がいっそう強調されているかのようだ。

生物の骨格は、その優美な外観と見事に連携している。全てが一つの細胞から分化して生成されるプロセスを思えば、その関係が不可分なのも当然かもしれない。しかし人工物のそれはどうだろうか。振り返れば、骨格を隠蔽すべく見ばえを恣意的につくってきた行為こそが、デザインだったのではないかという疑念もわく。それでも、デザインの根幹はその製品の骨格にあるのではないかという期待もある。

 

上の文章は私が2年ぐらい前に「骨」展企画書のために書いた文章の前半部分(全文はここ)です。この文章と一冊の写真集を作家の皆さんに送って作品の製作を呼びかけました。

やけに力んだ文章ですが、まあ、戦の前の檄文みたいなものなので…。でも本当に生物の骨格の美しさに見とれてしまうと、自分は何やってんだろうとと恥ずかしくなってきます。落としてこわれてしまったときこそ、魅せられてしまうようなプロダクトをいつかは設計したいものです。

皆さんに送った写真集は湯沢英治さんの『BONES——動物の骨格と機能美』(早川書房刊)。写真もその中の1枚です。その後、あらためて湯沢さんご本人にも声をかけ、「骨」展への参加を快諾いただきました。

9 Comments »

  1. はじめまして。
    勝間さんのページから来ました。

    「デザインのはじめは骨格」という考え方に非常に共感いたしました。
    骨格が曲がっている、またはしっかりしていないために、不都合が生じるそのためにその骨格を矯正する、というような仕事をしております。
    (整体師ではなく、メーカ勤務のエンジニアです)

    今後も楽しみに拝見させていただきたいと思います。

    コメント by たつ — 4月 5, 2009 @ 8:01 am
  2. はじめまして。勝間さんのブログからここにたどり着きました。
    芸術家の方のブログを訪問するのは今回が初めてです。
    とてもシンプルなデザインのブログで、いい感じをかもし出していますね。
    私は美術・デザイン関連の知識はまったくと言っていいほどないのですが、それでもシンプルさの中に洗練されたものを私は感じました。プロならではですね。
    骨というのも似たようなものなのでしょうか。奥が深いような気がします。

    コメント by RM — 4月 5, 2009 @ 10:57 am
  3.  はじめまして。榊原と申します。
     実は内容文すっ飛ばして書いています。いや、すごい!
     単にすごいと感じたまでですが、この言葉がふさわしいと思います。
    私も絵は描きますが、何せフィーリングで骨格はあとからコントロールする、という描き方なため、がちり固まったこれら4作品(、、でいいでしょうか?)の本当に「骨格」、参考になります。
     またアングルが多方向から及んでいて、立体感の勉強になります。このブログページを覗いてまだ数分ですが、心からジワワワワーっときた部分がありましたため書きました。すごいお邪魔だったと思いますが、最後まで見て(聞いて)頂き、ありがとうございます。

    コメント by Sakakibara — 4月 5, 2009 @ 12:23 pm
  4. 同じく、勝間さんのブログからです。

    骨、骨格って美しいですね。
    植物でも、動物でも自然のものは本当によく作られていると思います。

    美しいものは、骨格から美しい、骨格は誤魔化しが効かない、
    何でも、土台が本物であることからしか積み上げられないものもある気がします。

    コメント by canna — 4月 5, 2009 @ 6:05 pm
  5. たつさん、初めまして。
    初めてのブログに、一番最初にコメントをいただきました。
    ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

    コメント by yam — 4月 5, 2009 @ 10:17 pm
  6. RMさん、はじめまして。お褒めいただきありがとうございます。
    よろしくお願いいたします。

    コメント by yam — 4月 5, 2009 @ 10:20 pm
  7. 榊原さん、はじめまして。
    ご期待に応え続けられるかどうか心配ですが、よろしくお願いします。

    コメント by yam — 4月 5, 2009 @ 10:21 pm
  8. cannaさん、はじめまして。
    自然はいつも私たちのものづくりのお手本ですね。よろしくお願いします。

    コメント by yam — 4月 5, 2009 @ 10:24 pm
  9. […]湯沢英治の骨の写真は、黒い背景にとけ込むような深い陰影が特徴的です。一般的な標本写真では、形状を説明するために影の部分にも柔らかい光を当てるのが普通なので、この陰影の深さは異例と言えます。結果として一部の情報は失われるのですが、代わりに骨格全体の力強い立体構造があざやかに浮かび上がります。 […]

RSS feed for comments on this post. TrackBack URI

Leave a comment

Copyright(c)2024 山中俊治の「デザインの骨格」 All rights reserved. Powered by WordPress with Barecity