寺田寅彦「漫画と科学」
物理学者でありエッセイストでもあった寺田寅彦は、1921年に「漫画と科学」というタイトルでこんな文章を残しています。
漫画によって表現された人間の形態並びに精神的の特徴は、一方において特異なものであると同時に他方ではその特徴を共有する一つの集団の普遍性を抽象してその集団の「型」を設定する事になる。こういう対象の取扱い方は実に科学者がその科学的対象を取扱うのと著しく類似したものである。
・・・(中略)・・・
漫画が実物に似ていないにかかわらず真の表現であるという事は、科学上の真というものに対する多数の人々の誤解をとくために適切な例であるように見える。漫画が実物と似ない点において正に実物自身よりも実物に似るというパラドクシカルな言明はそのままに科学上の知識に適用する事が出来る。(初出:大正十年三月『電気と文芸』)
人体のエッセンスを単純な描線に抽出する漫画と、自然現象の本質をシンプルな法則として表現する科学は、どちらも抽象化による真理の記述だということですね。
ここで寺田先生のいう「漫画」はデフォルメの効いた戯画表現一般の事のようです。当時は漫画と言えば新聞などの風刺漫画が一般的だったようですが、それについては「私の考えている漫画としてはやや純粋を欠く」と言い切っています。それゆえに現代の「マンガ」や「コミック」、あるいは「アニメ」「イラスト」に置き換えても全く同じ論点でいけそう。
これを読んだのは一昨日の電車の中だったのですが、あまりの共感に鳥肌が立ちました。変な顔してたかも。漫画と科学はどちらも真理を抽出した表現形式である。この認識こそが、かつてエンジニアでありながら漫画家でもありたいと願い、今はプロダクトをデザインしている私の活動の立脚点そのものだったからです。
上の漫画は雑誌AXISのために2007年に私が書き下ろしたものです。
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山中さんの漫画、プロみたいですね。
今からでも間に合いませんか?
是非、ご専門を漫画でまとめて、
子供たちにもわかる、科学漫画をお描きいただけないでしょうか?
はじめまして。すごいですね、山中さんが漫画を書いていらしたのは知っていましたがここまですごいとは思っていませんでした。
しかも随所に出ている機械兵器のようなものはそれぞれ山中さんの作品になっていますね。実にかっこいいです。
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powaroさん、ありがとうございます。
実はこの漫画を描いている間、仕事が止まってしまって
LEDのスタッフに多大な迷惑をかけてしまいました。
いまのところ、本格的にやるのはむずかしそうです。
Shootさん、はじめまして。
掲載に当たっては最終ページに下記のような注意書きがそえられました。
サイクロプスは二〇〇二年「ロボット・ミーム」展に、八輪ロボットカー「ハルクⅡ」および没入型遠隔コクピット「ハル」は、二〇〇七年日本科学未来館のアトラクションとして公開されました。いずれも平和利用が目的であるため、武装は施されておりません。
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