いらっしゃいませ、「はんぱ屋」です。

Exhibition — yam @ 9月 8, 2010 12:16 pm

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鉄砲伝来と宇宙基地で知られる種子島には、千年の伝統を誇る「種子鋏」を打つ鍛冶職人たちがいます。数年前にその作業場を見学させてもらったときのこと、私は、ふとある物体の美しさに目を奪われて、作業中の親方に声をかけました。

「あの・・・その足もとに置かれたものを譲ってくれませんか。」

初老の親方の足下には、柔らかい鉄(柄や背の部分)と固い鋼(刃の部分)を叩き合わせたばかりの鋏の原型が並べられていました。それは長い棒のついたナイフのような物体で、この後に長い柄をくるりと丸めて二つ合わせるとあの鋏の形になります。

変なことを言い出す人がいるもんだと苦笑いしながら、親方はそれを手渡してくれました。まだ暖かいその物体には、仕上げられた繊細な種子鋏にはない、親方の息づかいがありました。荒々しい質感と素朴で実直な形には、これから鋏になるという意思が込められているようにも見えました。

ものづくりの現場が大好きな私は、製作途中の物にしばしば魅せられます。職人の作業場や工場に、刹那的に現れる不思議な物体たち。本来の機能はまだ持っていないのですが、そこには、作り手の苦心の痕跡があり、製造技術の知恵と工夫があらわになります。

明日から開催される銀座目利き百貨街のために、いろいろな現場からそうした半製品、「はんぱもの」を集めてみました。

千年の伝統「種子鋏」の「アラヅクリまで」
特殊紙の製紙工場から集めてきた「紙の耳」
革職人の作業場から「底のない靴」と「バッグの底」
出版社から本のプロトタイプ「束見本」
三百年の伝統を誇るからくり人形の「歯車とガンギ」
などなど

未完成品ばかり扱う「はんぱ屋」。ロゴデザインは佐藤卓さんです。

なお、九代目玉屋庄兵衛氏からは、2005年に大英博物館に寄贈されたものと同じ「茶運び人形」の部品一式を出品いただきました。玉屋さん以外の人が組み立てることは不可能だそうですが、ご希望の方がいらっしゃれば、一体分のみお売り致します。

4 Comments »

  1. 疼きます。
    ロゴも素敵ですね。

    週末、実物を見に行きます!

    コメント by tq3 — 9月 8, 2010 @ 2:35 pm
  2. tq3さん

    早々に売り切れ続出で申し訳ありません。
    楽しんで頂けたかどうか、心配です。

    コメント by yam — 9月 12, 2010 @ 8:21 pm
  3. 「紙の耳」「束見本」「バッグの底」が見られなかったことは残念でしたが、茶運び人形の部品に見とれてしまい、閉店後まで居座るほど楽しませて頂きました。
    ありがとうございました。

    コメント by tq3 — 9月 13, 2010 @ 11:47 am
  4. tq3さん

    ご来店ありがとうございます。
    売り切れ続出で申し訳ありませんでした。
    部品をじっくり見て頂いた事うれしく思います。

    コメント by yam — 9月 15, 2010 @ 12:50 pm

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